オリンピック招致の決め手、3本柱。
1.IOCの心配のタネをつぶす
2.IOCの現実的なニーズに応える
3.IOCの理念的なニーズに訴える
まずは、1点目についての解説です。
■1.IOCの心配のタネをつぶす
まずは、安心の阻害要因を潰すこと。
「最低限、これは揃わないと検討の土俵に乗らない」という要素について説明します。
具体的には「汚染水問題」と「アクセス問題」の2点です。
汚染水問題は、選手や観客の安全という必要最低限の課題。これをクリアしない限りは、招致は望めません。
もうひとつのアクセス問題は、前回の招致においても課題になりました。その意味では、大きな障壁です。
この2点に対して、どのようにアピールしたか?
■汚染水問題は、夢の場面ではなく、実務のシーンで語る
汚染水問題については、プレゼンでは安倍総理が「問題ありません」と軽く触れるだけに止めました。
その一言をフックにして、質疑応答で質問を引き出し、それに対してしっかりと回答しました。
私は、そのバランスもよかったと思います。
プレゼンにおいては、夢の世界を描く。
そして、質疑応答では実務的に冷静に、数字で回答する。
プレゼンのなかで簡単に触れておいたからこそ、質疑応答で案の定、質問が出てきた。
このあたりも、すべて戦略通りだったのだと思います。
■アクセス問題は、交通網とコンパクトな会場計画の両面から
アクセスのしやすさについては、2面的なアピールがなされました。
ひとつは、コンパクトな会場計画。会場間の距離が近いので、行ったり来たりが大変ではないと。
小谷美加子さんの映像や、水野正人氏のスピーチがそれを語ります。
もうひとつは、交通網について。こちらは、猪瀬知事のプレゼンの中で触れています。
でも、説明しきれなかった部分は、やはり質疑応答で聴かれましたね。
それに対しては、猪瀬知事が数字とともに適切に回答しています。
■「1.IOCの心配のタネをつぶす」はあくまで、障害がないことを示したにすぎない
さて3つのポイントのうち「1.IOCの心配のタネをつぶす」について見てきました。
ご覧のとおり、ここでは東京の魅力を語ったのではなく、そつのなさを語ったのみです。
ここで終えていたとしたら、東京招致はあり得なかったでしょう。
一方で、こうした心配の種が残っている状態では選ばれなかったのも事実。
1つめのポイントは地味ですが、無くてはならない一手だったと私は思います。
さて、次からは「2.IOCの現実的なニーズに応える」を解説していきます。