オリンピック招致の決め手、3本柱。
1.IOCの心配のタネをつぶす
2.IOCの現実的なニーズに応える
3.IOCの理念的なニーズに訴える
いよいよ、3点目についての解説です。
■3.IOCの理念的ニーズに訴える
3番目はIOCの理念的なニーズに訴えるというものです。
どういう意味か?
いわば、根本の目的にまで遡るということです。
そもそも、IOCはどういう理念のもとに設立されたのかを理解すること。
そして、東京での開催がその理念の実現に最適だと訴えること。
これが、今回のアプローチです。
前回、IOCの現実的ニーズはオリンピック大会の成功だと言いました。
では、オリンピック大会はそもそも何の目的で開催されているのか、ご存知ですか?
簡単に言えば、
「スポーツの発展を通じて、体・心・が鍛えられた人間を育成すること。
そしてスポーツで各国が競い合うことで、国際交流が図れ、世界平和に寄与すること」
これがオリンピックの存在意義です。
単にスポーツを楽しむために存在するのでもなければ、経済目的でもないのです。
■オリンピック憲章を読み解く
上記のようなことは、オリンピック憲章に書かれています。
オリンピック憲章とは、一言でいうと、オリンピックにおける憲法のようなもの。
そのなかの特に大切な項目“オリンピズムの根本原則”から引用します。
オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意思と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである。
スポーツを文化や教育と融合させるオリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の創造である。
オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある。
その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。
(詳細は、こちらのJOCページがとてもわかりやすいです)
キーワードを抜き出すと、「教育」「良い手本となる」「発達に役立てる」など。
そして「平和な社会を推進する」。この2つが、オリンピックの意義なのです。
■日本は次世代につなぐことをアピールした
人を育てることと、国際交流が平和につながること。
東京がアピールにしたのは、前者”人を育てる”でした。
太田雄貴選手はスピーチで語りました。
メッシ、カカや内村選手などの実在するスター選手が、アニメのヒーロー達から刺激を受けました。
同様に、あらゆる国々から多くの子どもたちを、彼らが好きなスポーツへと導きます。
つまり、オリンピックのヒーローが、次のヒーローたちにきっかけを与えると。
安倍晋三首相は言いました。
グローバルなビジョンのもとに、人に投資をしていく。それこそが大切だ。
事実、日本は3000人以上の若者がスポーツインストラクターとして世界80カ国以上に乗り出している。
佐藤真海選手のスピーチは、まさにスポーツに救われ、スポーツに育てられた自身の話。
そして、他のアスリートたちと共に、5万人の子供たちに希望を与えた話でした。
彼女は、五輪に育てられ、五輪と共に後進に勇気をあたえた「体現者」なのです。
極め付けは、Feel the Pulseの映像。
オリンピックのヒーローと出会った少年。
赤いリストバンドを腕にして、次は自らが次世代につないでいく。
■一貫して語ったこと
日本のプレゼンテーションは、一貫して
「次世代へつなぐ。スポーツを通じて、子供たちを育てていく」とアピールしました。
最後に、安倍首相の言葉と、竹田理事長の言葉を紹介します。
安倍首相
「オリンピックが遺すものは、建造物ばかりではない。人を作ることだ」竹田理事長
「東京に投票してください。
それはスポーツに恩恵をもたらすグローバルなビジョンへの投票です。
今日から2020年まで、そしてその後何十年にもわたって」
なぜ、その後何十年にもわたってなのか?
それは、後進が何十年にもわたって、その意思を引き継ぐからです。
■東京のプレゼン勝利は必然?
日本をプレゼンテーションで訴えたことは3つでした。
1.IOCの心配のタネをつぶす
2.IOCの現実的ニーズに応える
3.IOCの理念的ニーズに訴える
IOCの理念を大切にし、それを実現できるのは自分たちだと一貫して訴えた日本。
それだけではなく、目の前の現実的な課題である2020年の大会成功を示した日本。
しかも、汚染水問題などの迷いも不要だと、実務的に答えることもできた日本。