専門性の高いプレゼンテーション
プレゼンテーション研修を受講いただく企業様のなかには、極めて専門性の高い業種もあります。
先日、数名の方に個別フィードバックさせていただいた企業さまもそのひとつ。遺伝子分野での解析サービスを提供なさっている科学系ベンチャー企業です。
プレゼンを聞いた瞬間に理解できるのは、とてもかしこい受講者さん方だということ。そして、ひとつの専門領域について、とても精通した方々だということ。
数学という専門分野をドロップアウトした私にとっては、尊敬しかありません。
そして、そのプレゼンを聞く対象の方々も、IQが高いのです。
いわゆる、ドクターの方々であったりですから。
専門領域プレゼンで起こりがちな問題は「伝わった気になる」
ここからは一般論ですが、専門領域に関するプレゼンテーションでは、陥りがちなワナが存在します。
なんだと思いますか?
聴き手が知らない専門用語を連発してしまうこと?
それは当然問題です。
もうひとつ問題なのは、専門用語を用いることで、伝わった気になってしまうことです。
聴き手も、その用語自体は知っていたとしましょう。
それでも、その用語についてどれくらい深く知っているかは人によります。
でも、その理解度のズレが”用語自体は知っている”ということによって隠れてしまうのです。
プレゼンテーションに関する間違ったやりとりの例
たとえば、僕たちプレゼンテーションの世界にもいくつかの専門用語があります。
以下のようなやりとりを見て、どう思いますか?
なんだか、話し手と聴き手はそれぞれ、コミュニケーションが取れているように見えます。
簡単に説明すると、
- コンテンツ = 話の内容の魅力
- ストラクチャ = 構成のわかりやすさ
つまり、左の男性が言いたいのは「せっかく聴き手にとって魅力ある内容なのに、それが伝わりにくい構成になっている」ということです。そして、おそらくここまでは右の女性も理解しています。
しかし、ここで話が完結してしまうのです。
そのせいで、聴き手に対してどういう受け止められるのか?
具体的に、伝わりにくい構成とはどういう風になっているのか?
そうしたことに話が行かなくなっている。
実は、専門用語を使うと、話し手は「伝わったつもり」になりやすく、聴き手は「わかったつもり」になりやすいのです。
聴き手が「わかったつもり」にならなければ、その後に質問があったかもしれません。その質問を通じて、理解のミスマッチがあることに気付けたかもしれません。ミスマッチは、双方にとって不幸です。
「伝わったつもり」を防ぐための、具体化と抽象化
では、どうすればよいか?
シンプルな解決策は、専門用語を用いる場合は、具体度と抽象度をそれぞれ高めながら話すことです。
「具体的に言うと…」
「それで、どうなるかというと…」
「実際におこっていることでいうと…」
「つまり一言でいうと…」
こうした表現の言い換えを使いながらプレゼンテーションをおこなえば、理解のミスマッチを回避しやすくなります。