from 野村尚義

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あなたはリーガルハイというテレビドラマをご存知ですか?

2012年にフジテレビで放送されていた連ドラで、続編やスペシャルも放送される人気シリーズです。

堺雅人演じる主役の弁護士(強欲・毒舌・凄腕)古美門研介と、新垣結衣演じる新米弁護士(純真・熱血漢)黛真知子が様々な訴訟問題を解決する法律ヒーローストーリー(?)ですが、私このドラマが大好きなんです。

そのなかでも特筆したいのが、第9話にでてくる伝説のスピーチ。6分間の演説があまりにも心を打つと評判になりました。

先日わたしが主催する勉強会でこのプレゼンテーションの分析を披露したのですが、思った以上に評判がよくて笑

せっかくですから、ここにシェアしたい思います。

元ネタのスピーチをご存知の方は記事末の動画に飛んでください^^

プレゼンテーションの場面設定

まずは場面設定を簡単に。

とあるところに絹美村(きぬみむら)という過疎化が進んだ村がありました。老人たちが住むこの村はひとつの問題を抱えていました。それが公害問題です。

数年前に仙波化学という化学メーカーが村に工場をつくったことをきっかけに、健康被害問題が勃発しました。村民たちは化学工場を相手取り、公害訴訟を起こそうとしています。

そこで白羽の矢が立ったのが弁護士古美門研介。村の老人たちは古美門のもとに公害訴訟の手助けをするように依頼します。そして彼を連れて絹美村に戻ります。

しかし当の老人たちはどこか呑気。訴訟という大仕事にたいして覚悟が見えません。

一方で、訴訟を起こされそうな仙波化学もじっとしてはいません。村民たちを丸め込み、訴訟を取り下げさせようとあの手この手を尽くします。

そして今日、両者の会合がおこなわれ村民たちが態度を軟化しはじめます。

以下、リーガルハイ第9話より引用です。

伝説のプレゼンテーション序章~村人たちの軟化

【村人たち】
私は、和解でいいかなと思うんだけど。

【黛】
待ってください。仙波化学は、皆さんを騙そうとしたんですよ?

【村人たち】
騙すなんて言い方しちゃ、仙波化学さん可哀想ですよ。
「私達も娘にね、裁判なんてやめたほうがいいんじゃないかって言われてるのよ。
2000万もあれば、みんなで分けても、一人頭100万近くにはなる。私達には分相応なんじゃないかな。

【黛】
公害訴訟なんですよ!?もっと貰って当然なんです!

【村人たち】
そんなにあったって、ねえ。
私達が望んでいたのは、仙波化学さんの誠意なんです。今回それがよく感じられました。
そう、絆を。再確認出来たもんね?
金が全てじゃないんですよ。

伝説のプレゼンテーション Stage1 突き放し

村人たちの態度を見て、古美門弁護士はそれを受け入れる姿勢を見せます。

【古美門】
素晴らしい!皆さんのお考えに感服いたしました。さすがふれあいと絆の里だ。それではそのように手続きしましょう。黛君あとは頼んだ。さようなら

【黛】
先生これでいいんですか

【古美門】
いいんだよ

【黛】
でも

【古美門】
彼らが良いと言ってるんだから。ですよね皆さん

【村人たち】
ええ、この世には金よりも大事なものがありますから。

【古美門】
見たまえ彼らの満足そうなこの表情を。ズワイガニ食べ放題ツアーの帰りのバスの中そのものじゃないか。

黛君よく覚えておきたまえ、これがこの国の馴れ合いという文化の根深さだ。人間は長い年月飼い馴らされるとかくもダニのような生き物になるのだよ

【村人】
何!?俺たちのこと言ってんのか

【古美門】
他に誰かいますか?自覚すらないとは本当にうらやましい。

コケにされているのも気づかないまま墓に入れるなんて幸せな人生だ。

【村人】
あんたちょっとひどいんじゃないか?

【古美門】
申し訳ありません最初に申し上げたとおり皆さんのような惨めな老人共が大っ嫌いなもんでして。

【村人たち】
おい若造、お前何なんだよ!お前そんなに偉いのか!
そうよ!目上の人を敬うってことがないの!?
私たちは君の倍は生きてんだ!

【古美門】
倍も生きていらっしゃるのにご自分のこともわかっていらっしゃらないようなので教えて差し上げているんです。

いいですか。皆さんは国に見捨てられた民、棄民なんです。国の発展の為には年金を貪るだけの老人なんて無価値ですから、ちりとりで集めてはじっこに寄せて、羊羹を食わせて黙らせているんです。大企業に寄生する心優しいダニそれが皆さんだ。

【黛】
先生もうやめてください。

【村人】
てめえだってダニに寄生してる黴菌じゃねえか!
あたしたちの何が気に入らないの!

伝説のプレゼンテーション Stage2 回想

村人たちを怒らせたあと、古美門弁護士は語り始めます。絹美村の昔と今までの経緯を。

【古美門】
かつてこの地は、一面に桑畑が広がっていたそうです。どの家でも蚕を飼っていたからだ。それはそれは美しい絹を紡いだそうです。それを讃えて人々は、いつしかこの地を絹美と呼ぶようになりました。

養蚕業が衰退してからは稲作に転じました。日本酒に適した素晴らしい米を作ったそうですが、政府の農地改革によってそれも衰退した。

その後はこれといった産業もなく、過疎化の一途を辿りました。市町村合併を繰り返し、補助金でしのぎました。五年前に化学工場がやってきましたねえ。

反対運動をしてみたらお小遣いが貰えた。多くは農業すら放棄した。

ふれあいセンターなどという中身の無い立派な箱物も建ててもらえた。使いもしない光ファイバーも引いてもらえた。ありがたいですねー。

絹美という古臭い名前を捨てたら南モンブラン市というファッショナブルな名前になりました。なんてナウでヤングでトレンディなんでしょう。

そして今、土を汚され、水を汚され、病に冒され、この土地にも最早住めない可能性だってあるけれど、でも商品券もくれたし、誠意も絆も感じられた。ありがたいことです。

本当によかったよかった。これで土地も水も甦るんでしょう。病気も治るんでしょう。工場は汚染物質を垂れ流し続けるけれど、きっともう問題は起こらないんでしょう。

だって絆があるから!

伝説のプレゼンテーション Stage3 反旗

古美門弁護士の言葉を聞き、痛いところを突かれた村人たちは逆上します。

【村人たち】
はなせーてめえなんかーぶっ殺してくれるー
ジョウジの気持ちはもっともだ
そうよ、どうしてそんな酷いことが言えるの!あんたは悪魔よ!
あんたなんかに、俺たちの苦しみがわかってたまるか!

俺たちだってあんたの言ったことぐらい嫌というほどわかってる。
みんな悔しくて悔しくて仕方ないんだ。だけど、必死に気持ちを押し殺して納得しようとしてるんじゃないか!

【古美門】
なぜ?ゴミクズ扱いされているのをわかっているのに、なぜ納得しようとしてるんです!
【村人】
俺たちはもう年寄りだし

【古美門】
年寄りだからなんなんですか?

【村人】
具合が悪いのにみんな頑張ってきたんだ

【古美門】
だから何だってんだー!
だから労わってほしいんですか。だから慰めてほしいんですか。だから優しくされたらすぐに嬉しくなってしまうんですか。

先人たちに申し訳ないと、子々孫々に恥ずかしいと思わないですか?

何が南モンブランだ。絹美村は本物のモンブランより遥かに美しいとどうして思わないんですか!

誰にも責任を取らせず、見たくないものを見ず、みんな仲良しで暮らしていければ楽でしょう。しかしもし、誇りある生き方を取り戻したいのなら、見たくない現実を見なければならない。深い傷を負う覚悟で前に進まなければならない。戦うということはそういうことだ。愚痴なら墓場で言えばいい。

金が全てではない?金なんですよ。あなた方が相手に一矢報い、意気地を見せ付ける方法は。奪われたものと、踏みにじられた尊厳にふさわしい対価を勝ち取ることだけなんだ。それ以外にないんだ!

伝説のプレゼンテーション Stage4 個別化

黙ってしまう村人たち。古美門弁護士は熱のこもった口調のまま、ひとりひとりに語り掛けます。

ニシキノハルオさん、あなたは元郵便局長だ。幾度となく閉鎖されそうになった村の郵便局を最後まで守り抜いた。

モリグチサブロウさんは小学校の校長先生。村にいた子供たちはみんなあなたの教え子だ。奥さんのヒサコさんは町のデパートの化粧品売り場で月間売り上げの記録の保持者。

ゴウダジョウジさんは実に100ヘクタールもの田畑を開墾した。カワタサトコさんとご主人は田んぼをやりながら日雇いの仕事をいくつもいくつも掛け持った。

トミタヤスヒロさんは商店街の会長。毎年祭りを盛り上げて、あのクリスタルキングを呼んだこともある。イタクラハツネさんは女だてらにクレーン車を動かし、六人の子供を育て上げた。

敗戦のどん底から、この国の最繁栄期を築き上げたあなた方なら、その魂をきっとどこかに残してる!

…はずだと期待した私が愚かでした。いいですか。二度と老後の暇つぶしに私を巻き込まないでいただきたい。心優しいダニ同士お互い傷を舐めあいながら穏やかに健やかにどうぞくたばっていってください。

野村の分析

さてここまでよろしいでしょうか?

ここまでご理解いただいたうえで、私の分析動画をご覧ください。

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